矢継ぎ早に開発/アップデートが繰り返されるスマートフォンアプリ。多くの開発業者は競合に遅れをとらないようハイペースのリリースを続けるが、開発プロジェクトには多額のコストがかかるため、「iPhone」や「Android」、「Windows8」等、多様なプラットフォームごとにアプリを開発するのは、特に小規模事業者にとっては大きな負担である。開発期間の無理な短縮によって、十分なテスト工程を確保できない弊害も生まれている。
各種ソフトウェア開発を手掛けるF社は、スマートフォン向けアプリの開発によって、ここ数年業績を伸ばしてきました。しかし競争の激化と、それにともなう開発期間の短縮化により、アプリの検証においていくつかの課題に直面していました。 課題の一つは、慢性的なリソース不足でした。同社開発部マネージャーN氏はこう語ります。 「アプリの開発は、「iPhone」や「Android」などのOSごと、またバージョンや機種など、いくつものプラットフォームに対応する必要があります。そのため検証には膨大な工数を要し、当社のような小規模ソフトハウスにとっては、リソース不足が深刻な問題となっています。開発に必要な時間を確保するためにテストを怠ったことが原因で、頻繁なアップデートが必要となり、余計にコストがかかったケースもあります」 また、実機検証用の端末をすべて揃えるためのコスト/工数も悩みの種となっていました。 「数百種類にもおよぶ各種端末を常に取り揃えておくためには、とんでもない費用と手間がかかります。しかも次々に新機種が発売されるため、検証コストを肥大化させる原因となっていました」(N氏)
加えて、F社内ではかねてより、“機能面”のテストしか行っていない点も問題視していました。 「十分なテスト工数と期間を確保できないために“ユーザの使い勝手”を意識した検証が疎かになっており、後からクライアントに使いにくさを指摘されるケースも多々ありました」(N氏) こうした状況を憂慮したF社上層部は、ユーザ離れや不具合対応によるコスト増加を防ぐために、アプリ検証の強化による品質向上が必要と判断しました。しかし、通達を受けたN氏は頭を抱えてしまいます。 「自社のリソースはもう限界で、かといってテスターを雇用するのもコスト的に難しい現状でした。このような状況下で、どうやって満足いくレベルのテストを実現させるのか・・・途方に暮れるしかありませんでした」(N氏)
N氏はとある展示会で、「スマートフォン向けアプリ検証サービス」をPRしていた第三者検証会社ヴェス(以下ヴェス)のブースに立ち寄り、自社の抱える課題を相談。解決の糸口を見出します。 詳しく話を聞いたN氏がまず着目したのが、独自のノウハウとアプリ検証の豊富な経験を持つ“第三者検証の専門会社”にテストを任せることで、リソース不足の解決を図れるメリットでした。 「ヴェスさんにはまず、機能面のテストを“最適化”する提案をしていただきました。膨大な検証項目の中から必要な範囲を絞り込むことで、工数とコストを大きくセーブできます。また、ユーザ視点での検証も十分に行われるので、自社の機能テストだけでは発見できなかった部分(使いやすさなど)もチェックでき、品質向上が見込めました」(N氏)
さらに、コスト面での課題については、首都圏より人件費の安い地方の人材を活用する“ニアショア”によって解決が図れることを知ります。 「中国やインドに発注するオフショアでは、委託できるテストが限定されるため、機能面以上のテストは難しいのですが、国内のニアショアであれば、コストを抑えつつ都内と同レベルのテストを実施することが可能です。また、ニアショア先においても、検証に必要な各種端末を常に取り揃えているとのことで、最低限のコストで品質向上を実現できると確信しました」(N氏) 加えて、ニアショアの委託先として、岩手県立大学が管理運営する「i-MOS(いわてものづくり・ソフトウェア融合テクノロジーセンター)」を利用できる点も、N氏の導入決断を後押ししました。 「産官学連携による情報交換や共同研究は、今後の品質向上を考えていくうえで大きなプラスになると判断しました」(N氏)
こうして、ヴェスの第三者検証サービス採用を正式決定したF社。 サービスの導入後は、期待通り低コストでリソース不足を解消し、さらに漏れのない検証によりアプリの品質向上を実現しました。 N氏はこう語っています。 「コストもリソースも不足するなかで、手詰まりだったアプリ検証の課題を解決でき、ほっとしています。専門会社のノウハウを投入することで、使いやすさが向上するとともに不具合発生率も減少し、競合サービスとの間に優位性を確保することができました」