近年、製品ライフサイクルの短命化により、開発工程においては、より一層のテスト期間短縮とコスト削減が求められており、品質管理部門には過度の負担がのしかかっている。こうした状況を打開する手段として注目されているのが「テスト自動化」による効率向上である。しかし、自動化の方法やメリットはさまざまであり、工程の見直しや自動化する項目の振り分け、ツールの選択など、効率化実現までには多くのハードルが存在する・・・。
オシロスコープや信号発生器等、各種電子測定器の製造販売を行うE社では、半年前にとあるパワーデバイス測定機器の新モデルをリリースし、好調な売れ行きを見せました。 数ヵ月後にはマイナーチェンジが予定されていましたが、品質管理部長のM氏は「リリース前のことを思い出すとゾッとしました」と語ります。というのも、開発の際、受入テスト工程に膨大な工数とコストを費やしていたのです。 「すべて人手に頼っているため、10,000項目ほどのテストを無事にクリアさせる苦労は並大抵のものではありませんでした」(M氏) 短い開発期間に加え、厳しいコスト削減要求が品質管理をさらに困難な状況に追い込んでいました。そこでM氏は、「自動化」によるテストの効率アップに注目し、ツールの導入を検討しました。しかし、ここでいくつかの問題に直面することに・・・。
問題のひとつは、自動化による具体的なメリットが判断できない点でした。 「効率化への漠然とした期待はあっても、自動化が実際どの程度のコスト削減や工数削減に結びつくのか、具体的な数字が出せませんでしたし、数あるテスト項目のうち、どれを自動化するべきかの判別もできませんでした」(M氏) また、仮に自動化による有効性が判明したとしても、ツールには有償無償を含め、価格や機能面で無数のバリエーションがあるため、どれを選択すべきかが分かりません。 「とはいえ、前回のように手作業に依存しているままでは、モデルチェンジや不具合対応の都度、膨大なコスト/工数を費やすことになり、生産性を高められません。また、手作業は個人のスキルに依存するところが大きいため、品質のバラツキや、ミスによる重大な不具合が発生する可能性も考えられました・・・」(M氏)
解決策を探していたM氏は、社内の別製品の品質管理担当者より、第三者検証専門会社の株式会社ヴェス(以下、ヴェス)を紹介されます。以前テストを依頼したところ製品リリース後の不具合発生率が劇的に減少したという話を聞いたM氏は、担当者にコンタクトを取り、自社の課題を相談しました。 E社を訪れたヴェスの担当者はM氏に対し、「まずは、テスト自動化にメリットがあるかどうかを調べてみませんか」と提案。手詰まり状態だったM氏は、さっそく調査・分析を依頼しました。
対象製品分析 M氏の依頼を受けたヴェスは、手始めに対象製品の調査に着手。製品カタログや数百ページにおよぶマニュアルを分析するとともに、開発担当者へのヒアリングを行い、自動化のために必要な情報を収集していきました。
テスト分析 次に、M氏らが現在行っているテスト内容の見直しを行いました。現行のテスト項目では、設計者自身がテストを行い、“暗黙的”な確認で済まされている項目が多く含まれており、こうした項目を自動化できる内容に修正するなど、テスト構成の最適化も合わせて実施しました。
スコープ設定 前フェーズで再構成したテスト項目をもとに自動化にかかるコストと効果を概算し、項目を「自動化」、「手動」、さらに一部人手を残す「半自動化」に振り分けました。
ツール選定 「自動化」「半自動化」に振り分けたテスト項目を実行できるツールを選定。機能や導入効果/コスト等を比較したうえで候補機種を絞り込み、「精度は高いが高コスト」、「海外製品のため日本語マニュアルがないが、安価で高精度」といった、いくつかのパターンを提示しました。また複数のツールを組み合わせて使うケースも想定し、M氏に提案しました。
効果見込み 最後に、振り分けたテスト項目と選定したツールの情報などをもとに、自動化による効果を割り出しました。その結果、10,000項目のテストのうち、2,500項目において自動化メリットがあると結論されました。
こうして、「テストの自動化」はE社の工数削減に十分なメリットをもたらすことが分かりました。 懸念されたツールの導入コストについても、1年間に2回のマイナーチェンジ、もしくは不具合による修正、さらに類似製品が2機種あるため、年間5回以上の再利用が実現でき、約2年で投資金額を回収しプラスに転じると試算されました。 これらの調査分析報告をもとにE社は社内会議を行い、ほどなく「テスト自動化ツール」の採用を決断しました。 今回の導入について、M氏はこう語っています。 「自動化によって過度な負担から解放されるとともに、継続的に高い品質を確保できるようになりました。我々だけでは、メリットを事前にここまで突き詰めることは不可能でしたので、導入を実現できたことに対し非常に感謝しています。ヴェスさんには豊富な経験とノウハウに基づき、勘所を押さえた最適の提案をしていただきました。引き続き今後のサポートもお願いしています」