電気機器メーカーB社 厳しい市場競争下、“性能向上だけ”では頭打ち?次期モデル成功の決め手は、「ユーザの生の声」に即した操作性改善に─。

背景

製品の開発競争が激化する中、「ユーザ評価の獲得」は市場で優位に立つ上での必須条件となっている。ものづくり大国・日本において“壊れない”“不具合が起きない”高性能さはもはや当然であり、むしろ性能よりも“いかに使いやすいか”がユーザの満足度を得るための重要なファクターとなっているのである。
しかし、この当たり前に思える「ユーザビリティ」は、意外と見過ごされがちでもある。開発者の視点に立ってみると、どうしても性能追求型で製品スペックへと偏ってしまう、またはユーザ視点の把握が困難、といった問題が垣間見える。

しかし、このようなギャップを抱えていると、しばしば開発工程の中で手戻りが発生し、開発現場をムダに疲弊させるばかりか、開発リードタイムを長引かせる原因ともなる。下手をするとリコールにもつながりかねない。いま求められているのは、真に「ユーザ視点に立った」製品開発だが・・・。

課題・問題

性能向上だけでは頭打ちの複合機市場、次期モデル成功の決め手となる“何か”とは?

画像家電からIT機器、オフィス機器などを幅広く手掛ける電気機器メーカーB社では、このほどコンシューマ向け小型複合機の主要ラインナップについて、次期モデルの開発が決定しました。複合機市場は厳しい競争にさらされており、メーカー各社はデザイン性や信頼性、コスト抑制(イニシャル型、ランニング型)などそれぞれの特色を打ち出すことで、市場でのポジションを確保しています。
B社製品もコンシューマ/ビジネス双方において一定のシェアを獲得していますが、すでに成熟しきった市場だけに革新的な技術開発は難しく、製品スペック的には競合他社と比較してもすでに頭打ちの状態でした。

つまり、次期モデル成功に向けては、性能向上以外に決め手となる“何か”が必要な段階にきていたのです。
「ユーザからの評価を得るには、「ユーザビリティの向上」で差別化するしかない」

そう判断したB社コンシューマ事業部のプロダクトデザインおよび設計/開発部門は、現行モデルの検証や競合他社製品との比較を通して自社製品の“使いやすさ”を徹底的に見直すことに。そして、まずは次期モデルのベースとなる設計仕様書とそれに基づくプロトタイプを作成し、「操作性改善度」の検証を行いました。

自社QAで検証するも「具体的根拠」が欠如。必要なのはユーザの“生の声”だが・・・

検証は、同事業部の設計/開発部門に属するQAチームによって行われました。QAチームは設計仕様書における要件に対し、さっそくテストケースを設計・実施。そして数週間後に返ってきたレポートでは、操作性はおおむね改善されており、ユーザの利便性にも十分に応えているということでした。
しかし、開発チームはこの結果に満足しませんでした。同社コンシューマ事業部 設計/開発部 開発チーム シニアマネージャーのS氏はこう語ります。
「本当に改善できているのか?と思ったのが正直なところです。改善仕様を設計したのは同部門の隣のチーム。また、テスト設計もこれまでと変わらず、実際にテストに携わるのも同じ社内のメンバーであるため、検証方法に客観的な視点が欠けているのではないかという疑問が払拭できずにいたのです」
実際、現行モデルのリリース当時も、開発側が予想もしなかったユーザ操作による不具合が報告されており、不安に拍車をかけたといいます。同社の上層部も今回のテスト結果については同じように判断し、生産ラインや部材調達先の変更など、莫大なコストがかかるモデルチェンジを許可するには「具体的根拠に欠ける」として、プロジェクトは振り出しに戻ってしまいました。
「次期モデルの改善仕様を決めるために必要なのは、ユーザの“生の声”を反映した、明確かつ信憑性のある根拠でした。とはいえ、コストや人的リソースにおける余裕はなく、ノウハウもない中で自社で一般モニターを集めて検証を行うことは現実的に不可能でした」(前出S氏)
製品開発は大きな壁に突き当たりましたが、この間にも刻一刻と開発期限は迫っていました。

課題・問題のポイント

  • 次期モデル開発にあたり、頭打ちの製品スペックに代わる決め手として「ユーザビリティ強化」が必要

  • 自社QAで検証するも、客観的視点や具体的根拠に欠けるとしてプロジェクトが中断

  • ユーザの“生の声”を求めるも、自社でモニター検証を実施するにはコスト・リソースおよびノウハウが不足

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